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住宅:【石神井の家】(内覧会の様子UP)

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住宅:石神井の家

詳しい解説は写真の下部に掲載しております。
ご覧になりたい方は下まで移動後、御覧ください。

【 条件 】 ご夫婦、お子様3人
【 内容 】
関西出身のご夫婦が家族ごと都内の本社へ移動することとなり、お住まいを設計することとなった。
1階は主寝室と機能室をまとめ、2階はLDKと子供室をつなげワンルーム風とし広がりを確保した。15m2まではデッキテラスが認められるため、1階・2階ともデッキテラス空間をどう各室と絡め、空間の用途や質を向上できるかに注力した。この15m2により有効な建ぺい率を15%上げることができ、軒下も有効な延床と考えるなら30%上昇していることになる。2階は全体をワンルーム風とするため、各室の収納を全て無くし、1階の大きい納戸へと集中させている。郊外と違い都市部では建ぺい率の超え方が主題の一つになる。今回はこの主題に対しての一つの回答とし、1階のプライベートをどうゆるやかに外部と接続するか、といったこともデッキテラスの軒下空間をルーバーで囲うことで成立させている。高さ方向では、リビングと連続する子供室を大ロフトを作り、上部にも広がりを確保した。

【 建築概要 】
計画:東京都練馬区石神井
竣工:2016年12月
用途:専用住宅
規模:木造2F
敷地:100.45㎡
建築:58.59㎡
延床:112.69㎡
設計:加藤秀基
施工:有限会社伸栄
構造:大原和之 , 高橋修一 / 建築構造研究所 [ BSI ]

 

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【 詳細解説 】

ご夫婦とお子様3人の合計5人のための家です。角地で都内では非常に条件の良い土地形状であったため、不動産購入検討から法規的なチェック・購入条件・土地金額の妥当性について相談を受けました。地盤調査も行い予算取りについての条件を整理しました。地盤改良を行うと100万円を超える金額がこの時点で消費されてしまう可能性がありましたが、地盤改良は不必要との判定が出たので予算の範囲内となる2階建ての在来工法の木造2階建てを計画しました。要望をまとめると3階建ての容量になってしまったものの、見積りが予想通り高く出ましたので、本当に必要なものなど取捨選択を行い金額と設計をまとめました。

設計の特徴として、建ぺい率の60%を更に超えて土地を利用するため、デッキテラスを追加し75%の土地使用率まで合法的に特別拡大しました。隣地は民事法で50cmまで使用しにくいので、20m2使用できないとすると、80m2のうち75m2の使用率となります。残りは駐車場として利用しているので、非常に高い使用率で土地を活用できました。都会や郊外に関係なく「住宅街においては土地をどこまで広く使い倒せるか」が非常に難しい課題です。逆に庭が広くとれる環境下では住宅の配置方法や借景の最善位置を探るのがテーマになります。

内部の床面積は有効内部としては100m2くらいですが、半外部のデッキや軒下、屋根裏収納など、生活上で実行的に使用している面積を150m2近くまで増やしています。機能的な部屋(洗面、浴室、納戸、WCなど)を1Fにまとめ、2Fは子供室とLDKですが、子供室の扉を開放すると、なんと2F全てがワンルームとなるような設計にしました。土地は長手方向に12mの距離がありますが、この12mを子どもたちが走ることが可能です。内覧会では来場されたお子さん達が走り回るような家になり、建築家冥利に尽き嬉しい思いを感じることが出来ました。これまで設計してきたリフォームやマンションのリノベーション、住宅を含めて、都市部では特にこの長手方向の距離の獲得を狙って設計しております。この距離を都市部の住宅で確保することが非常に難しいのです。

内部の説明をします。家族でボーイスカウトに参加するなどアクティブな家庭であったため、玄関収納を広くとり、日常生活+趣味の活動を整理しやすい大きな玄関を大きな引戸で設計しました。玄関先の軒下空間はデッキテラスと連動したルーバー材で構成し素材感をまとめ、自転車を隠したり、道路から部屋を見えにくくしたり、道路と建築の間のプライバシーのクッションとして利用しています。また住宅の顔としても機能しますので、冷たい印象になる人工的なルーバーではなく、無垢の針葉樹を炭化処理しルーバー材とした特殊な素材で木の板目が見えるルーバーを採用しました。遠くから見ても近くからみても楽しめるような木の質感を意識しています。2Fのテラスでは素足でこの板に触れ、休日には外で食事ができるような空間を設計しました。

内部の洗面所・脱衣所・サンルーム・浴室は全て一体空間とし、浴室の浴室乾燥暖房機が全体に広がり、沢山の洗濯物も室内で乾燥できるような設計としました。この設計には、韓国や中国への出張や見学をもとにサンルームの在り方を日本バージョンに置換えて設計しております。大気汚染や環境汚染はもはや他の国の事柄ではなくなっています。家族の数名は花粉アレルギーをお持ちでしたので、春にはこの空間が非常に機能します。雨の日はもちろんですが。給気口も最新のNASTAの製品ですのでフィルターを定期的に交換することによってPM2.5や花粉・排気ガスの除去が高レベルで可能となっております。

扉関係ですが、子供室は思い切り開けても壊れない金具、他の開きドアは開けた時に開放保持が可能な金具、2Fはワンルームにできるような大開口の連動引戸、トイレは内部からでもロックがし易い引戸錠、どの引戸もソフトクロージング機能を付けています。金具一つの選択でも日常の生活において気持ちよさの底上げが可能です。窓関係は1Fは防犯、日差し、通風の3つの要望をかなえる稼働ルーバーや、稼働ルーバー雨戸にて、夏には冷房をしなくても風が家中を通り抜けるような選択をしています。

階段はゆったりと登り降りができ、途中で人がすれ違うことができる幅に広げています。通常は90cmという尺の寸法で階段は作られてしまいますが、せっかくの特注住宅ですので、110cmというイレギュラーな寸法感でゆったりとした階段設計を行いました。階段下にトイレが配されているので、自動的にトイレも幅が広いゆったりとした空間となりました。

キッチンは奥様のこだわりでセンスよく機械部が選定されています。ガスコンロ、ガスオーブン、深型の食洗機、90cmを超えるシンク、浄水器水栓とキッチン水栓、ガスコンロと自動連動で動くステンレスレンジフード(素敵です!)、これらをまとめる2.7mのキッチン本体と、贅沢な広めの背面収納。全ての扉にソフトクロージング機能の金具が付き、表面の腰壁でお客さんにはキッチンの手元が見えないような腰壁があるといった設計となっております。大手メーカー品で保証関係をしっかりとしながら、要所要所をキッチンメーカー以外での取扱製品に変更することで、コストパフォーマンス良くキッチンを構成可能です。一番汚れる部分にはキッチンパネルを配し、その他はイタリア製のタイルを壁に貼り、床面はモルタルに見える磁器質タイルで木フローリングとの対比で意匠デザインしました。弊社ではキッチンの設備機器を決める際はショールームにご一緒に伺ってもらい、面材やカウンター材、高さなど細かい部分まで決めさせてもらっております。毎日使う部分なので、こだわるべきポイントです。キッチンとテラスは勝手口でつなぎ、リビングの大開口とあわせて奥様のキッチン動線は回遊型を意識して設計しております。最新の建売等でも売りにしている設計手法ですが、たしかに日常の動線計画としては有効です。

これから設計士となる方や、これから住宅設計のご依頼をお考えの方々は、エクスナレッジから出版の増田奏さん著「住まいの解剖図鑑」、松下希和さん著「住宅・インテリアの解剖図鑑」、鈴木信弘さん著「片づけの解剖図鑑」の3冊をお時間がとれるときに何気なく流し読みでも読まれると、住まいづくりにおいての動線や身体の動きに合わせた設計寸法や手法の制限や間の扱い方を効率よく学べます。コンセプトが尖った住宅を作りたいのか、生活しやすい住宅を作りたいのか、それらは相反したりうまく整ったり設計しているうちに付いたり離れたりします。この難解な立体パズルの解を一緒にみつける冒険が家造りです。建売りは全国民がターゲットですから、入居する方がその間取りに生活を合わせる必要があります。建築家が設計する住宅は、本来の家族がとりたい動線や行動に寄り添う住宅とも言えます。

構造や坪単価について、坪単価の安さだけを売りにしているハウスメーカーが作る建物と注文住宅の在来工法の建て方の、柱材や土台、基礎の作り方を意識して見るようになると、坪単価の違いが理解できるようになります。近隣の土地で家が建ち始めたらぜひ見てみて下さい。住宅など建築物は、車とは違い買い替えが容易ではありませんので、慎重に将来への投資をお考えいただけると僕達設計者も嬉しい限りです。きちんとしたハウスメーカーで建てると僕達とあまり価格的には変わりませんので、その違いは企業の安心感でしょうか。メーカーは営業さんがプランを作り、決定したプランをインハウスの設計士が実施図を書くベルトコンベア式のスタイルです。専門家である我々の柔軟な設計技能が必要かどうかが、堅実なハウスメーカーさんと、我々建築家へのご依頼との、選択の分かれ道となります。以上を踏まえて、上記の写真をもう一度みていただくと印象がまた変わって見えてくるかと思います。

※プランを見たいという方はメールにて理由やご希望などご連絡ください。お施主さまの大切なプライバシー情報ですので直接ご連絡させていただき、内容を一部制限した情報で協議後、開示させていただきます。竣工後の内覧やご取材などご希望の方はお施主さまへヒアリングし承諾を得てからのご案内となります。ご了承下さい。
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